営業DX

営業DXとは?企業のデジタル革命を推進する8ステップ

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営業DXは、企業がデータとデジタル技術を活用して、顧客のニーズに基づいて営業戦略を見直し、それに合わせて営業プロセスや体制を再構築することを指します。

社会や経済、産業構造の変化に加えて、市場や顧客など企業を取り巻く環境全般でデジタル化が進んでいます。これに対応するため、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。これにより、営業の将来はどのように変化していくのか、DXと営業変革を考える前に、まずはDXの定義から見ていきましょう。

DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、経済産業省の「DX推進ガイドライン」に基づくと、「企業がビジネス環境の急速な変化に対応するため、データとデジタル技術を駆使して、顧客や社会のニーズに基づいて製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指します。

この定義から明らかなように、DXはあくまでデータとデジタル技術を利用する手段に過ぎず、その本質は企業や組織が環境の変化に適応し、競争上の優位性を獲得し、維持するために全体的な変革を遂げることにあります。言い換えれば、DXは企業や組織がデジタル化社会に適応するための包括的な変革を意味します。

競争上の優位性を確立・維持することは、急激な環境変化にもかかわらず安定した収益を確保し続ける能力を構築することを指します。そのためには、DXは単なる技術の導入やプロセスの変更に留まらず、組織文化やビジネスモデルの革新、顧客志向の強化など、幅広いアプローチを必要とします

DXとデジタル化の違いとは?

ここで、混合しやすいDXとデジタル化の違いを紹介します。

この二つの違いは以下の表の通りです。

DXデジタル化
・効率化を図ることが主な目的
・人が行っていた業務の一部をITツールで代替すること
・ITツールは目的達成の手段として位置づけられ、定着すれば成功
・競争上の優位性を確立・維持することが主な目的
・組織全体の変革や営業力の向上を通じて高い収益性を追求する
・Tツールはあくまで手段であり、組織や営業活動の全体像を踏まえた改善の一部

DXにおいては、ITツールは手段に過ぎません。自社の社内システムを見直し、変革すべき方向性を確定させ、その上でITツールの力を借りながら改善を進めます。DXは、単に何かをデジタル化したからと言って成し遂げられるものではありません。むしろ、デジタルの力を活用して業務効率を向上させると同時に、個人に依存しがちな要素を改善し、営業力を総合的に強化することで高い収益性を目指します

一方で、企業活動におけるデジタル化は、従来人が行っていた業務の一部をITツールで置き換え、業務の効率化を図るプロセスです。例えば、請求書の送付方法を郵送からメールに変更したり、日報の管理方法を紙からスプレッドシートに移行するなどが挙げられます。この取り組みの目的は、業務の効率化にあります。ITツールを導入し、定着させることで成功を収めることができます。

DXの3つの目的

次に、DXの目的についてより詳しく解説していきます。DXの目的は大きく以下の3つに分けられます。

価値創造・ビジネスモデル変革

企業のデジタル変革(DX)において、最も重要な目標の一つが価値創造とビジネスモデルの変革です。デジタル技術を駆使して新たな価値を生み出し、市場での競争優位性を確立することが求められます。このプロセスは、従来のビジネスモデルを見直し、顧客ニーズに応じたサービスや製品をデジタル化することで実現します。成功するためには、革新的な思考と、市場の変化を敏感に捉える能力が不可欠です。企業はデジタル変革を通じて、持続可能な成長のための新しいビジネスモデルを構築する必要があります。

業務効率化・働き方改革・生産性向上

DXは、業務効率化、働き方の改革、そして生産性の向上をもたらします。デジタルツールの導入やクラウドサービスの活用により、時間や場所に縛られない柔軟な働き方が可能になります。また、自動化技術の進展により、煩雑な業務プロセスが簡素化され、従業員がより創造的な作業に集中できる環境が整います。

このようにDXを進めることで、企業は生産性の大幅な向上を実現し、従業員のワークライフバランスの改善にも寄与します。業務効率化と働き方改革は、企業の競争力を高める上で不可欠な要素です。

意思決定力向上

デジタル変革は、企業の意思決定プロセスに革命をもたらします。ビッグデータやAI技術を活用することで、リアルタイムでのデータ分析が可能になり、より迅速かつ精度の高い意思決定をすることが可能です。

データ駆動型のアプローチにより、市場のトレンド予測、顧客行動の分析、リスク管理など、幅広い分野での意思決定が強化されます。このプロセスは、企業が不確実性の高いビジネス環境で競争優位性を確保するために、重要な役割を果たします。意思決定力の向上は、企業が持続可能な成長を遂げるために必須の要素です。

DXの7つのカテゴリー

DXには7つの重要なカテゴリーがあります。

営業促進・加速

特に営業DXと呼ばれるカテゴリーです。営業活動の効率化と生産性向上を図るためのツールであるSFAは、幅広い機能を備えています。営業活動の記録や日報の管理、商談進捗の追跡、営業数字の予測、案件管理、クレーム処理など、多岐にわたる業務をサポートし、それらの情報を部門間で共有することが可能です。

カスタマーサポート

インバウンドセールスの効率化を図るためのインサイドセールスシステムなどが含まれます。顧客とのコミュニケーションを音声やテキストで記録し、顧客に適切な情報やメルマガを送信する機能があります。

インテリジェンス・解析

営業活動から得られるデータを活用するためのツールで、高度なデータマイニングやAIを利用してネクストアクションを支援し、顧客の課題を特定します。

顧客関係管理

顧客データの管理やプロモーションの追跡を行い、顧客との関係性を見える化するツールです。クラウドとの親和性が高く、様々な場面で活用されています。

顧客体験

顧客の購買体験を向上させるためのツールで、ウェブ接客やチャットツールなどを利用して顧客のオンライン体験を最大化します。

コンタクト・コミュニケーション

顧客とのコミュニケーションを最適化するためのソリューションで、コールセンターシステムや顧客との電話対応を向上させるツールが含まれます。

人材開発・コーチング

営業担当者の教育と成長を支援するツールで、教育資料の提供やオンラインでのロールプレイングなどが含まれます。

営業DXはなぜ必要なのか

営業DXの必要性は、主にBCP(事業継続計画)や生産性向上などに関連しています。

日本は自然災害が頻繁に発生する国であり、大規模な災害は生活や仕事に大きな影響を与えます。特に、新型コロナウイルス感染症の流行により、リモートワークの需要が高まりました。リモートワークの導入が遅れている企業でも、迅速にITツールを導入し、労務の変更を行うことで変化に対応しようとする動きが見られました。

さらに、労働力の減少に伴い、生産性の向上がますます重要視されています。これに対応するためには、従来の業務をより効率的に行うための省力化が求められます。この省力化により、1人あたりの業務量を増やし、生産性を向上させることが可能です。

営業DXは、こうした状況に対応するための手段として注目されています。顧客情報の効率的な管理や共有、マーケティング戦略の最適化など、営業DXによって企業は変化に柔軟に対応し、競争力を維持・向上させることができます。

営業DXの3つのメリット

  • 営業活動を効率化する
  • 属人化した業務やスキルの標準化
  • 顧客の課題解決に向き合う時間を増やす

営業活動を効率化する

営業DXは、従来の手作業や紙文書に頼った営業プロセスをデジタル化することで、業務の効率化を実現します。

たとえば、顧客情報や商談履歴をクラウド上で一元管理し、営業担当者がリアルタイムで情報を共有・更新することができます。これにより、情報の把握やタスクの管理が容易になり、営業活動全体の効率が向上します。

DX化推進により営業プロセス自体に変化をもたらし、見込み客の選定からアプローチまでの労力を大幅に削減することが可能となるでしょう。

属人化した業務やスキルの標準化

営業DXは、個々の営業担当者が持つスキルや経験に左右されず、業務やプロセスを標準化することで、業績の安定化や成果の最大化を目指します。例えば、営業プロセスの自動化やAIによる顧客分析を導入することで、営業活動の一貫性を確保し、業績の向上につなげることができます。

顧客の課題解決に向き合う時間を増やす

営業DXは、単なる営業のオンライン化ではなく、顧客の本質的な課題解決をできる組織になることが目的です。営業活動をオンライン中心に切り替えたり、データ活用で最適化を図ることは生産性の向上に繋がりますが、それだけではデジタル化です。

営業DXは、ルーティン業務や事務処理を自動化することで、営業担当者が顧客との接点を増やし、より深い関係構築に集中する時間を確保します。これにより、顧客のニーズや課題に対する理解が深まり、より効果的な提案や解決策を提供することが可能となります

営業DXの具体的な手順8ステップ

  • 現状の評価と目標設定
  • デジタルツールとプラットフォームの選定
  • データの整備と活用
  • 自動化の導入
  • トレーニングとチームの準備
  • モニタリングと改善
  • 顧客フィードバックの統合
  • セキュリティとコンプライアンスの確保

現状の評価と目標設定

現状の分析: 現行の営業プロセス、システム、ツール、データの利用状況を詳細に評価します。

目標の明確化: 営業DXの導入によって達成したい具体的な目標を設定します。例えば、収益の増加、効率の向上、顧客満足度の向上などが考えられます。

デジタルツールとプラットフォームの選定

ニーズの分析: 営業活動における具体的なニーズに基づいて、適切なデジタルツールやプラットフォームを選定します。CRM、セールスオートメーションツール、分析ツールなどが含まれます。

統合性の確認: 選定したツールやプラットフォームがシームレスに統合できるか確認し、データの一元管理を実現します。

データの整備と活用

データクレンジング: 不要なデータをクリーンアップし、正確で信頼性の高いデータを確保します。

データの活用計画: ビッグデータやリアルタイムデータの活用方法を計画し、洞察を得るためのデータ分析戦略を策定します。

自動化の導入

業務プロセスの特定: 自動化が有益な業務プロセスを特定し、優先順位をつけます。

ワークフローの設計: 選定したツールを使用して、自動化されたワークフローを設計し、人的エラーを減少させるための仕組みを構築します。

トレーニングとチームの準備

トレーニングプログラム: 従業員に対するトレーニングプログラムを実施し、新しいツールやプロセスの使用方法を教育します。

変革への参加: チームメンバーを変革に参加させ、意欲的に新しいデジタル環境に適応できるようにサポートします。

モニタリングと改善

KPIの設定: 成果を評価するためのキーターゲットパフォーマンスインディケータ(KPI)を設定します。

モニタリングと評価: 実装後にプロセスや成果を定期的にモニタリングし、課題や改善点を特定します。定期的なフィードバックループを確立します。

顧客フィードバックの統合

顧客エクスペリエンスの向上: DXの進捗を定期的に顧客にフィードバックし、顧客のニーズに合わせてプロセスやサービスを改善します。

セキュリティとコンプライアンスの確保

データセキュリティ: デジタル環境のセキュリティを確保し、データ漏洩やセキュリティリスクから企業を守ります。

法的要件の遵守: 地域や業界の法的要件に準拠し、コンプライアンスを確保します。

営業DXを成功させるための5つのポイント

実際に営業部門のDX化を推進する際のポイントを紹介します。推進ポイントを理解して行うことで、DX推進の成功率は格段にアップすると理解しましょう。

目的と期待効果を明らかにする

DXを進める際、どの部門でも共通して「目標」と「成果」の特定は重要です。これらを先に設定し、達成のためのアプローチを考える必要があります。また、目標の共有は絶対に実施すべきで、関与する全員が一致団結してDXの推進に励むことが成功へのキーであると認識しましょう。

営業プロセスを可視化する

営業部門でのDX推進に際しては、現行の営業活動の可視化が欠かせません。DXの進行により営業活動に変更が生じるため、目指すべき方向性を定めるには、現状の営業活動を明らかにして検討することが必要です。どのような営業活動が望ましいかを議論する上で、既存のプロセスを明確にし理解することが重要なステップです

DX化のための環境を整える

DXを成功させるためには、部門ごとの組織体制の強化が求められます。DXプロジェクトは営業部門に限らず、複数の部門が関わるため、各部門間での協力体制を構築することが不可欠です。営業部門だけの視点で進めるのではなく、IT部門を含む複数の部門が意見を出し合うことでDXを前進させることが重要です。そのためには、効果的な連携体制の確認と強化が必要です。

DX化に向けての投資や意思決定

DX推進において、投資の決定は極めて重要な要素です。考え無しにツールやシステムの導入を進めても、利益を生み出すことは困難です。どのシステムが現状の課題を解決するのに必要か、最小限のコストでDXを実施するためのツール選択が行われているか、過度なリターン期待が新たな挑戦を妨げていないか、多角的に検討しDXを推進することが求められます。そのためには、組織の現状を把握し、適切な投資決定を行うことが、DX推進のカギとなります。

導入後の効果分析・改善を行う

ツールやシステムを導入した後も、継続的な改善が重要です。導入前の計画はあくまで仮定に過ぎず、実際の運用結果が計画通りになるとは限りません。さらに、顧客のニーズは時代と共に変化するため、初期の計画から変更が必要になることもあります。そのため、導入後もツールやシステムを定期的に見直し、時代に合った改善を行うことが、DX推進における重要なポイントと言えます。

営業DXが失敗してしまう3つの要因

次に営業DXが失敗しやすい要因を3つ紹介します。これらの要因に気をつけて営業DX化を検討しましょう。

現在の営業戦略に慣れている営業部門からの不満

企業のデジタル変革(DX)への取り組みが失敗に終わる一因として、既存の営業戦略やプロセスに慣れ親しんでいる営業部門からの抵抗が挙げられます。長年にわたり築き上げられた方法論や環境に対する忠誠心から、新しいデジタルツールや戦略への適応が遅れがちになります。

変化への不安や新しい技術への不慣れさは、DX推進の障害となり得るため、社内の文化や意識改革が成功への鍵となります。

今までの売上を維持しながら営業DX化を進める必要がある

DXを進める上での大きな課題は、既存の売上を維持しながら新しい営業プロセスやツールを導入する必要がある点です。多くの企業にとって、日々の業績圧力は避けられない現実であり、このバランスをとることは容易ではありません。DX推進には時間とリソースが必要であり、短期的な売上への影響を最小限に抑えつつ、長期的なビジョンを追求する戦略的なアプローチが求められます。

成果が保証できない中での営業DXの推進

営業のデジタル変革を推進する過程で、その成果は常に保証されるものではありません。新たなツールの導入やプロセスの変更は、期待される成果をもたらす保証がなく、この不確実性がDX推進の大きな障壁となることがあります。成功への道は試行錯誤の連続であり、不確実性を管理しながら、失敗から学び、継続的に改善を図る柔軟性が重要です。企業は、リスクを最小化する戦略と同時に、失敗を恐れずに前進する勇気も必要とされます。

営業DXを推進する際の2つの注意点

営業DX化が失敗する要因を理解したところで、注意するべき2つのポイントを紹介します。

関連部署との連携、確認を怠らない

営業部門におけるDXの推進は、単に営業部門内だけで進められるわけではなく、関連する他部門との協力が不可欠です。このプロセスを進めることで生じる多様な変更により、営業部門のみならず、関連する各部門間での連携と理解が必要となります。特に、導入する意義や変更点についての理解の食い違いを防ぐための工夫が求められます。DXの推進に当たっては、社内全体に向けた方針の共有や関連部門向けの説明会を開催するなどして、理解を深める取り組みが重要です。

ツール導入を目的にしない

DXを進める上での重要な注意点は、SFAツールなどの導入を最終目的としないことです。ツールを導入すること自体に注目が集まりがちですが、導入完了をもってDXが達成されたと誤解するリスクがあります。重要なのは、SFAツールをはじめとするツールが適切に活用されることが、実際の目的であるという理解を持つことです。この点は、どんなツールを導入する場合でも同様であり、注意深く進める必要があります。

最後に

営業環境の変化は今後も加速すると考えられます。情報の蓄積が進むにつれて、セールステクノロジーの価値がますます高まるでしょう。ただし、営業は引き続き非常に人間らしい仕事です。お客様との信頼関係を築き、未来に導くためには、洞察力と創造力に満ちた人間にしかできないことがあります。

テクノロジーの進化によって営業活動が自動化される日が来るかもしれませんが、それよりも前に、貴社の営業の本質的な価値を再定義することが重要です。